■トシノカズ 
ゴンズウ、または牛王杖(ごおうずえ)。
長さ2尺(60.5cm)、小指大の山ハジの木2本を縛りつけ、さらにこれを15束一括りにする。先端に樒(シキミ=ホトケシバ)の葉や、鬼ヤッシャの葉「トビ」(白紙に少量の米を包んだもの)を縛り付ける。講堂の仏壇上に供えておき、差定第16の「米華(まいけ)」の時に撒いたり、行事終了後に希望者や役付の村民に配る。持ち帰った者は、これを田の水口や畑に立てて、虫よけのまじないにする。

トシノカズのトシは年(歳・・とし)の神の年の事で、稲作に深い関係をもつと云われている神。トシノカズや、五穀豊穣を祈る呪物として用いられる削掛を法具として用いるところに国東半島の修正鬼会が民間の農耕儀礼を多分に取人れていることがうかがい知れる。



昭和33年の記録には山ハジの木と有るが、山ハジは漆科の樹木で、たいがいの人は被れてしまう。
さて、昔は山ハジとしても、今は?

■竹カザリ 3個 
「大輪(おおわ)」または「竹の輪」「華鬘(けまん)」と云う。直径90cmほどの割竹の輪で、上部に御幣のついた輪シメでとめる。また3ヵ所に樒(シキミ)の葉やトビなどを亜麻の皮で縛り付ける。

■ミカガミ(御鏡)2個
餅を縦75cm、横60cm厚さ6cmに薄く延ばす。長方形の餅を割竹で井の字型に挟む。竹の交点は藤カズラで結ぶ。また、ゆずり葉をつける。
ミカガミは、行事終了後に小さく切って部落の全戸に配る。
■ミツタマ(満珠)ヒツタマ(千珠)各1個
直径12cmから15cmの丸餅。「白玉」または「鬼の目」と言う。差定第16「米華」の時に撒く。これを拾えば無病息災になるという言い伝えで、皆争って拾う。

■鬼のオクワエ 2個
直径12cmから15cmの丸餅。差定第23「鬼後咒(きごじゅ)」の鬼鎮めに用いる。なかなか鎮まらない鬼に咥えさせて、鬼を鎮める餅である。

カザリ餅(オソナエ)多数
直径6cmほどの餅を数個竹串に刺したもの。講堂の仏前に供えておく。
3個の餅を串に剌した「三つ刺」を3串、五つ刺を5串、七つ刺を7串、九つ剌を9串、十二刺を12串(閏年の場合には十三刺を13串)、合計308個(閏年333個)、36串(閏年は37串)の餅を準備する。・・昭和33年記録。・・とある。



画像は、平成21年の薬師如来前に供えられているカザリ餅他である。上部に竹カザリ、右にトシノカズ、藁、中央にカザリモチなどが供えられている。

■メサマシ 多数
小餅に、胡椒をたっぷり入れた味噌をつけて、焼き、2〜3個ずつ竹串に剌す。長い行法の中途で眠くなったころ、僧侶・役付の人々をはじめ参詣者に配る。 
このメサマシはオニヨ当日に焼くが、講堂内の竹カザリとミカガミ他の餅や諸道具は、前日に、講堂の仏前(薬師如来)に供えておく。 
「竹かざり」3個とミカガミ2個は、講堂の仏前の上方、内陣の長押(なげし)に掛渡された竹竿に、吊しておく。向かって右から「竹かぎり」「ミカガミ」の順に交互に吊す。上の画像左右上に井の字型の竹に挟まれたミカガミが見える。また内陣の柱の外側には、葉のついたカシの木を結びつけて、森厳な気分を漂わせる。行法の際に松明を振りまわすので、火災予防も兼ねているとの事。
講堂の茅葺き屋根には火災予防のために前日から水を撒いて十分に湿らせてある。講堂内の床板もしっとりと水を吸っている色に見える。
境内には、参拝者の暖の為に焚き火があかあかと燃えている。
以上で準備の説明他とする。

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